✔︎「話すこと」を英語学習の一番の目的にしている人
✔︎これから「オンライン英会話を始める」「留学/ワーホリする」人
✔︎「英会話」に取り組んでいて、補足的に文法を学びたい人
に向けて、手元に置いておきたい英文法書を紹介しています。
ニュージーランドのカフェでバリスタとして働いているtabikuraです。
海外生活も1年10ヶ月目になりました。
英文法書って沢山ありますが、どれも説明がいちいち小難しく、「こんなの会話中に考えてる余裕ない...」というものが多くないですか?
ぼくはそう思います。
当記事では、
✔︎ 英文法を感覚的に学ぶことができる
✔︎ どんなキモチでその言葉を使うのかという根本の部分を理解できる
この2点を押さえた、話すための文法書「一億人の英文法」の紹介しています。
ここが理解できれば、会話において必要な"言葉を選びだす瞬発力"が身に付きますよ:)
自分の経験も交えてなるべく分かりやすく書きましたので、どうぞご覧ください。
- いいところ① 文や言葉の背景にある「感情・イメージ」に焦点が当てられている
- いいところ② "原型不定詞"などの「文法用語」が使われていない
- いいところ③ 「時表現」「前置詞」の項目は特筆すべきわかりやすさ
- よくないところ① ボリューム満点なのに、索引がなく、知りたい項目を見つけにくい
- よくないところ② "話すため"の文法書の枠を出ない
- さいごに
いいところ① 文や言葉の背景にある「感情・イメージ」に焦点が当てられている
まずこの本のいいところは 「感情」に焦点が当てられている点です。
人は感情の生き物ですし、コミュニケーションは、"その瞬間"の人の感情と、そこから紡がれる言葉から生まれるものなので、文法のシステムを頭ではなくて感覚で理解しておくことはすごく大切だと感じています。
そして、会話はテンポも肝心です。
会話中に「この場合にふさわしい文法は〜」「これは関係代名詞だから〜」などと考えている時間はありません。
英語を話せるようになるには、文法を感覚的に理解し、自分の感情に合った表現をすぐに取り出す、瞬発力を身につける必要があります。
つまり、感情に焦点が置かれているこの英文法書は、英会話学習者にとって◎なのです。
いいところ② "原型不定詞"などの「文法用語」が使われていない
文法学習で頭が痛くなるのが「To不定詞」とか「原型不定詞」とかの専門用語ですが、そういった専門用語はこの本ではほとんど使われていません。
例えば、「〜させる」という表現(使役構文)には「make, have, let, get (to)」がありますが、その使い分けをこの本では以下のように説明されています。
(かなり簡略化して紹介します)
make
makeは「(力をギュッと加えて)作り出す」ということ。
「力が加わる」「無理矢理」というニュアンスに特徴がある動詞です。
have
haveは単にそうした状況を持ちますよ、という体の動きが全く感じられない静的な意味にその特徴があります。
「I cut my hair.」は自分で髪を切った。
「I had my hair cut.」は床屋で切った。(髪がcutされる状況をhaveした)
let
letは「許す」という意味。
allowほど、かたい単語ではありません。
ある状況が起こるのを許す、手をこまねいている。そんな使い方をする動詞。
get
getは「動いて手に入れる」という動きが強く意識された動詞。
「get + 人 + to~」には何らかの働きかけ(友人に頼んだり、小遣いをやったりしながらto以下の行為に向かわせる)をして誰かを動かす意識があります。
以上の説明を踏まえて、
「ぼくの秘書にすぐFAXを送らせるよ」
という文章のうち、適したものを考えます。
どれが感覚的に正しい文でしょうか?
①I'll have my secretary fax it to you right away.
②I'll make my secretary fax it to you right away.
③I'll let my secretary fax it to you right away.
④I'll get my secretary to fax it to you right away.
【答え合わせ】
これを先ほどの"感情"を考慮しながら考えると、
②の秘書に「無理矢理」させる、③の秘書にFAXすることを「許す」、④秘書に「頼みこんで」仕事をしてもらう
は不自然で、「(上司と部下の関係のある)秘書にやってもらう自然な成り行き(状況)」を"have"する①が正解であることがわかります。
こんな具合に、「言葉のもつ感情や意識」に焦点が置かれ、「多彩なイラスト」も手伝って、感覚的に文法や単語を学べるようになっています。
いいところ③ 「時表現」「前置詞」の項目は特筆すべきわかりやすさ
「Can you~?」と「Could you~?」の2つのお願いする形。
Canの過去形であるCouldを使ったほうが丁寧な表現になるんですが、それがなぜなのか、この本の"時表現"の項目を読んで、一発で腑に落ちました。
過去形は「過去のできごと・状態」をあらわす形。
この形にはいつも「距離感」が意識されていることを意識してください。
できごとを「遠いもの」「今とは切り離されたもの」としてとらえるところに過去形の特徴があるのです。
I hoped you could lend me some money.
(お金をいくらか貸していただけるといいのですが)
過去形hopedは「望んでいた」という意味ではなく、I hopeの丁寧表現として機能しています。
過去形が丁寧表現となる理由は、その距離感にあります。
I hope (望んでいるのです)と言われたら、聞き手には相当の重圧がかかります。
その厚かましさから距離をとる意識が過去形の使用につながっているのです。
過去形は丁寧表現を作り出す大変ポピュラーな手段なんですよ。
p. 555 "時表現" ~ 過去形より
これどうでしょうか?
個人的には、すごく感覚的にも納得のいく説明だと感じます。
ぼくはニュージーランドへ来てカフェで初めて働いた日、
同僚に「Did you wanna take a break?」(休憩とってもらっていい?)
と聞かれたことがありましたが、
これが「Do you wanna~?」ではなく「Did you wanna~?」という過去形を用いた丁寧な表現だったのも、まだ関係性ができあがっていない「ぼく」と「同僚」との「距離感」によるものだったことを理解できました。
※Do you want to~?はCan you~?と同じくらい使われる依頼表現です。
「Want to」を「〜したい」と覚えてしまうと・・・ | 英語学習サイト:Hapa 英会話
この距離をとるキモチの動きがつかめると、助動詞の過去形"He can/could do it."(彼ならできるよ / できるかもなぁ)のニュアンスの違いや、
仮定法がなぜ"If I were you~"という過去形をとるのかがわかってきます。
こんな具合に、 根本的な意識を学ぶことで英語はグッと使いやすくなります。
その他「現在完了」や「未来」、「現在進行形」の説明や、「前置詞」の項目も本質をとらえたイラストや例文が豊富で、とても理解しやすい内容でした。
この項目のために手にとって読んでみる価値はあると思います。
よくないところ① ボリューム満点なのに、索引がなく、知りたい項目を見つけにくい
大絶賛してきましたが、残念なところもあります。
この本なんと670ページもあり、結構ずっしりとして重い本なんですが、痛いことに索引がありません。
なので「"used to~"の説明が知りたいな〜」なんて思っても、索引がないので670ページのなかから探し出さないといけません。
これは本当に面倒です。
よくないところ② "話すため"の文法書の枠を出ない
Amazonの評価を見ると、「★5もしくは4」の高レビューが73%を占めている一方で、批判的なレビューも散見されます。(レビュー数 : 344、2018年8月現在)
その多くは、「くだけた表現が逆にわかりにくい」「フォレストのほうがいい」というもの。
この本は「感覚的に英語を身につける」という徹底した狙いから、"関係代名詞"や"不定詞"などの文法の専門用語が存在していないのですが、
それが逆に英語学習者の混乱を招いているのだと思います。
大学受験やTOEIC試験対策に取り組んでいる人、つまり、体系的に英語を勉強している人、"話すこと"を第一の目的にしていない人にとっては、わかりにくく、あまり感覚的な理解は必要ではないのかもしれません。
全ての英語学習者に適した、最強の英文法書ではないこと、あくまでも英会話向けの英文法書であることを念頭において購入を検討することをオススメします。
さいごに
色々書きましたが、この本は「話すことを第一の目的に英語に取り組んでいる方」や「英語環境に接している方」にはものすごくオススメできる一冊です。
「手元に届くところに置いておいて、必要なときに何度も読み返す→"英文法"と"感情"をすり合わせて自分のモノにしていく」という方法が、この本の正しい使い方なのではないかと思います。