"粗挽きコーヒー"は、深層部まで水が浸透しない!?
どうも、tabikuraです。
先日紹介したHARIOスイッチの「お湯先、コーヒー後」レシピでは、細挽きのコーヒーを使うことを推奨しました。
普段淹れるエアロプレスも含めて、浸漬抽出をするときは基本的に細挽きを使います。
細挽きにする理由は、お湯がコーヒー粉の内部に浸透しやすくなり、短時間でもしっかりと成分を引き出すことができるからです。
そして何より風味や酸味、甘さ、複雑味をバランス良く感じられるのも楽しいです。
最近は雑味が一切ないようなクリーンなコーヒーを特に好んで飲まなくなったので、それも大きいのかもしれません。(渋味はNGです)
ぼくがコーヒーの細挽きを楽しむようになったのは、日々コーヒーを楽しむ過程での発見や嗜好の変化もありますが、キッカケはBarista Hustleの検証でした。
"粗挽きのコーヒーは深層部まで水が届いていない"
というのが結論なんですが、
かなり興味深い動画なので、ちょっぴりトンチンカンな日本語ですが翻訳機能をONにしてでも一度観てみることをオススメします。
以下、簡単に要約します。
Barista Hustleが行なった挽き目別の比較検証
挽き目の異なるコーヒーを3種用意する。
❶ 250μm以下の粒子
❷ 250~500μmの粒子
❸ 500μm以上の粒子
(1μm = 0.001mmなので、250μm=0.25mm)
❶~❸をカッピングボウルの中で100℃の湯で浸漬抽出し、一定時間ごとに抽出収率を測定する。
Q. 抽出収率ってなに?
抽出収率とは、コーヒーの成分が水へどれだけ溶解したかを示す数字です。
ぼくたちが日頃飲むコーヒーの数値は通常19〜23%です。(もちろん例外あり)
数値が高いほど、コーヒーの成分が多く溶け込んでいるので風味や複雑味、味のボリュームが増える印象です。
理論上30%を超えることはなく、残りの70%のコーヒーは水に溶けません。
測定結果
[以下3つの画像はBarista HustleのSifting Coffee Grinds - An Experiment から引用]
・250μm以下のコーヒー粒子は、抽出開始からわずか15秒で22%の抽出収率まで上昇した。
・同じ時間で、250~500μmのグループは19%弱、500μm以上はは14%強の抽出収率に達した。
・抽出開始10分後の結果を見ると、250μm以下、250~500μm以下の粒子の抽出収率は24%で、それ以上抽出が進行しない均衡状態に達していたのに対して、500μm以上のグループは19%の抽出収率にとどまった。
以上の結果に基づいて計算してみると、250~500μmの粒子は抽出開始から4分後には全体の98%まで水が浸透していたが、500μm以上の粒子では75%にとどまることがわかった。
結論
▶︎ 粒子の直径が200μm以上大きくなると、抽出時間や抽出量によっては水がたどり着けないコーヒー層が出てくる
▶︎ 理論上、粗挽きコーヒーの深層部は味や風味に一切関与しない可能性がある
■ 上記検証結果から考えられること
・挽き目が500μm(0.5mm)以上の粗挽きの場合、コーヒーの表面は抽出されてるが、深層部へは水が到達すらしていない可能性が高い
・粗挽きになるほど、粒子の外側の層と内側の層とで抽出に差が生まれるので、味がまとまりにくい可能性がある
Barista Hustleが行なった比較検証は静的な抽出条件下(浸漬抽出)の結果なので、透過抽出や撹拌を行った場合、またはコーヒーの焙煎度を変えた場合は違う結果になる可能性が高いですが、コーヒーの挽き目を考え直すきっかけとなりました。
"45秒で抽出率24%"を達成する極細挽き抽出
[Barista HustleのSifting Coffee Grinds - An Experiment から引用]
先ほどのBarista Hustleのデータをもう一度みてみしょう。
上記数字を見たときに「え、浸漬抽出でも極細挽きなら45秒で抽出収率24%までいくの?」と抽出収率の数字に馴染みがある方は驚いたかと思います。
ぼくらが普段2-3分くらい時間を掛けて淹れているコーヒーの抽出収率が19-23%くらいなので、極細挽きの抽出効率の良さがわかりますね。
最近"SIMPLIFY the brewer"や"HARIO 1回抽出ドリッパーMUGEN"といった"細挽き・蒸らしなし・一回注ぎドリッパー"が注目を集めています。
「蒸らしなしで、しっかり美味しいの?」と疑問だったので、実際に買ってレシピ通りに淹れて飲んでみて"味の良さ"に驚きましたが、Barista Hustleの上記データを見直して、納得がいきました。
"細挽きの抽出効率の良さ"を上手に応用したドリッパーだと思います。
ただし、コーヒーの成分のなかには「ある程度時間が経って(もしくは抽出が進んで)から初めて溶け出す親油性成分」もあるので、その点は考慮する必要がありますね。
(実際、SIMPLFYの1回抽出もややアッサリした仕上がりになる傾向があります)
細挽きで透過抽出ができない理由
細挽きの抽出効率の良さを今まで語ってきましたが「じゃあドリップコーヒーも細挽きにすればいいのでは?」って気がしてきますよね。
でも、それは難しい話なんですよ。
なぜなら、ドリップコーヒーなどの透過抽出でコーヒーを細挽きにし過ぎると、目詰まりの原因になるからです。
細挽きにすると、ドリッパーの中のコーヒーの層が大混雑し、お湯が通るスキマがなくなります。
それでもお湯は抵抗の少ないところを見つけて強引に通り抜けようとするので、偏った抽出経路ができてしまうんですね。
その偏った経路に沿ったエリアのコーヒーだけが過剰に抽出されるため、苦くて渋味のある成分を多く抽出してしまいます。
なので目詰まりしたコーヒーは美味しくありません。
この偏った抽出はチャネリングと呼ばれています。
そんな理由で、透過抽出ではドリッパー内が混雑しない挽き目を見つけるがめちゃくちゃ重要になるため、細挽きはできない、ということなのです。
一方で、水の流れのない浸漬抽出(エアロプレスなどを除く)ではチャネリングの影響を受けないので、その点において浸漬抽出には大きなメリットがあると思います。
まとめ
以上、「科学的には粗挽きが浸漬抽出にオススメされない」という話でした。
しかしながら、コーヒー業界ではフレンチプレスの挽き目は粗挽きが推奨されていますよね。
フレンチプレスで粗挽きが推奨されてきた理由は、以下が考えられます。
・深煎りが主流だった1920年代にイタリアで生まれた抽出器具であること(細くすると苦過ぎる)
・細挽きだと液体が濁ってしまうこと
一方で、HARIOスイッチの「お湯先、コーヒー後」レシピなら極細挽きのコーヒーを使って、短時間で非常に美味しいコーヒーを淹れることができます。
HARIO スイッチの使用方法については、更に色々試しているところですが、
ぜひ、興味ある方は使ってみてほしいです。
それではまた!