はじめに:なぜコーヒーが詰まるのか
家でコーヒーを淹れていると、必ず経験する悩みがあります。
ドリップの途中で水がなかなか落ちなくなる。
おもに抽出後半、ドリッパー内の水面がなかなか下がらず、抽出が終わる気配がしない、あの現象です。
もちろんぼくもありますし、コーヒーを淹れる人なら遅かれ早かれ誰もが経験する問題だと思います。萎えますよね。
この「コーヒーが詰まる問題」が発生したコーヒーの味は、
渋みや苦味が強く感じられる傾向にあります。
雑な言い方をしてしまえば、ほとんどの場合"マズい"コーヒーになります。
詰まる原因は、コーヒーを挽いたときに発生する微粉です。
抽出過程でその微粉がドリッパーの底へと沈み、
ペーパーフィルターの目には見えない繊維の隙間を塞いでしまうことで、抽出スピードを遅らせるのです。
微粉によってフィルターが詰まると、
行き場を失った水は、より抵抗の少ないエリアへと流れようとするため、
コーヒー層のなかに偏った水路が形成され、不均一に抽出された美味しくないコーヒーができあがります。
当記事では、「抽出中にコーヒーが詰まる4つの原因と解消方法」を紹介します。
これらの原因を理解し、そして避けることができれば、コーヒーをもっと美味しく楽しめるようになるはずですよ!
詰まる原因❶ 「粉を動かし過ぎている」
詰まる原因の1つ目は、粉を動かし過ぎることです。
「コーヒー粉は動かすと雑味が出るから、動かさないようにそっと注ぐのは常識でしょう!」
なんて考えもあると思います。
実は、これは大きな誤解なんです。
たしかに深煎りに関していえば、そうかもしれません。
ただし、成分を引き出しにくい浅煎りのコーヒーに関しては、むしろ逆だったりします。
粉を積極的に動かしてあげることでコーヒーの成分を引き出す力を強めることができたり、
均一に成分を引き出す作用が働いたりと、
実は粉を動かすことにも美味しくコーヒーを淹れられるようになるメリットがあります。
この抽出中にコーヒー粉を動かすスキルは撹拌(カクハン)と呼ばれます。
撹拌についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
したがって、必ずしも「粉を動かすこと=悪いこと」ではなく、撹拌には大きなメリットもあります。
ただし、これは諸刃の剣です。
なぜなら、粉を動かすことで微粉が底へ沈みやすくなり、それが「詰まり」の原因に直結するためです。
では、どうすれば良いのでしょうか?
オススメは、注湯を細い湯でコントロールすることです。
このことで粉が動きすぎることを防ぎますので、詰まり対策には間違いなく有効です。
ちなみに、T-falの電機ケトルややかんから、直接太い湯を注いでドリップする方もいるかもしれませんが、そうすると粉が暴れて微粉が沈み、詰まりやすくなります。
ですので、そういう方は細い湯を注げるものに移してから、ドリップするようにしましょう。
ぼくの場合、山善の電気ケトルを使って温度管理と注ぎをコントロールしています。
手ごろな価格で毎日美味しいコーヒーが飲めると思えば十分な価値があります。
家にT-falがあるのに追加購入はちょっと..,という方は、こういう簡易的なケトルもありますんで、いずれにせよ試してみるとよいでしょう。
詰まる原因❷「コーヒーの挽き目が細かすぎる、もしくはグランダーの性能が悪い」
初心者が陥る「コーヒーが詰まる問題」は「コーヒーを細かく挽き過ぎていること」が根本的な原因であることも多いです。
「細か過ぎるのかな?」と思ったら、グランダーの挽き目を1~2メモリ「粗く」することを試してみましょう。
ここで重要なのが、グラインダーの選択です。
最近ではさまざまなコーヒーレシピがオンライン上で共有されていますが、そのレシピは通常、レシピの提案者が使用しているグラインダーとあなたの使っているグラインダーが同等な性能であることが前提条件なんです。
レシピの提案者の使用しているグラインダーは通常、挽き目がそろっており、発生する微粉が少ないため、問題なく細かく粉砕できます。
ところが、初心者が扱っていることも多いブレードグラインダーやセラミック歯のグラインダーを使用した場合は、おそらく同じ結果を得ることはできないでしょう。
これらのグラインダーで挽かれた豆の粒度は均一ではなく、何よりも微粉を多く発生させるため、抽出中に詰まるリスクを高めるからです。
グラインダー選びのポイント
- 均一な粒度を実現できるか
- 微粉の発生が少ないか
- 粒度の調整が細かくできるか
なので性能の良いグラインダーを買いましょう!
...とオススメしたいところですが、それなりにお値段しますので、そう簡単にはいかないのも良くわかります。
実は、高性能ではないグラインダーでも美味しくコーヒーを淹れる方法があります。
代替案:浸漬式抽出法
コーヒーをお湯に浸けて成分を引き出すようなシンプルな抽出方法がオススメです。
原理はお茶の抽出方法と一緒ですね。
これに関してはハリオスイッチという器具の使い勝手がよく、ぼくも愛用しています。
ペーパーと粉をセットし、お湯を注いで、放置。
あとはレバーを押せば勝手に抽出完了です。
もしくは、「あくまでドリップにこだわりたい!」というのであれば、次のような工夫も効果的です。
- コーヒーを粗挽きにする
- 粉量を増やす
- 抽出時間を調整する
粗挽きにすることでコーヒーから引き出せる成分は少なくなり、薄い液体ができあがってしまいますが、粉量を増やしてその薄さをカバーするというアイデアです。
微粉も減らすことができるので、詰まりにくくもなりますね。
この抽出理論でいうと、ハンドドリップの世界大会で優勝した粕谷バリスタの「4:6メソッド」という粗挽きを活用したレシピがとても参考になります。
「誰でも美味しくコーヒーを淹れられるレシピ」と粕谷バリスタ自身がおっしゃってましたが、
実際にぼくもハンドドリップ初心者だった頃はよく利用させていただきました。
挽き目を粗めに調整しても詰まりが解消されないようなら、
先述の通り、粉を動かさないようにゆっくりと注いでみましょう。
詰まる原因❸ 「ペーパーフィルターのチョイス」
実は最近までぼくも知らなかったのですが、ペーパーフィルターが抽出に及ぼす影響の大きさは、世間ではもっと知られてないのでは...と思うことがあります。
「コーヒーが詰まる問題」の原因は、
コーヒーの微粉がペーパーフィルターの繊維の隙間を埋めてしまうことと冒頭で説明しましたが、
この詰まりやすさはフィルターペーパーの繊維構造によって結果が大きく変わります。
実際にこれは科学的にも証明されているんです。
天文物理学者であり、コーヒーブロガーでもあるJonathan Gagneが、フィルターペーパーの繊維構造の違いやその抽出結果について、科学的な視点から詳しく解説していました。
さらに興味深いのが、バリスタの世界大会で優勝経験があり、今もなお世界のコーヒー業界を牽引する存在であるJames Hoffman氏のYouTubeでの検証実験です。
ハリオ社の同型フィルターでも生産された工場によって繊維構造に違いがでるそうで、
抽出時間は最大50秒も差が出たという驚きの結果でした。
(漂白ペーパーでこんなに種類あったんかい!というのも驚き)
なぜフィルターの選択が重要なのか?
コーヒーの抽出において、「詰まりにくい」ということは、「湯が比較的均一に抜けている」ことを意味しており、偏った抽出(チャネリング)の影響を受けにくくなります。
ぼくの実験結果: 自宅でハリオ社のペーパーフィルターと、CAFEC社のアバカ ペーパーフィルターの違いを比較検証してみました。
結果、アバカのほうが10秒ほど早く落ち切り、味の骨格が鮮明でスッキリとした飲み心地になっていました。
フィルター選びのポイント
- 繊維構造が均一か
- 抽出速度が安定しているか
- 味わいへの影響が少ないか
詰まる原因❹ 「ステンレス製のKalita Wave Dripper」
実はKalita Wave Dripperのステンレス製のモデルは、
他のドリッパーよりも詰まりやすいとされています。
コーヒーのドリップ中に、水やコーヒーの重みで沈み込んだペーパーフィルターが、Kalita Waveの3つ穴の排水口のいずれか、もしくは全てを塞ぎ、排水スピードを遅らせてしまう現象です。
この現象は、ぼくも以前悩まされた経験があります。
Kalita Waveの三つ穴のうち、
— tabikura (@tabikuralog) 2021年2月17日
いつも一つからしか液体が出てない気がして、水平器でチェックしてみたが、そんな傾いてるわけでもなかった。
なんでえ pic.twitter.com/hmMVMcfNDU
後でわかったのですが、これには明確な理由がありました。
コーヒーのドリップ中に、水やコーヒーの重みで沈み込んだペーパーフィルターが、Kalita Waveの3つの排水口のいずれか、もしくは全てを塞ぎ、排水スピードを遅らせてしまう現象だったんです。
これはドリッパー底の凹凸が浅すぎるために発生する問題でした。
解決策:2つの選択肢
1. Scott Raoの応急処置法
コーヒー業界のオピニオンリーダーであるScott Rao氏は、丸く切り取った茶漉しを、Kalita Waveドリッパーの底へ敷くことで、排水口が塞がるのを予防する方法を彼のYouTubeで紹介していました。
これはぼくも試してみましたが、たしかに抽出スピードの遅れが解消される結果を得ることができたので、すぐに試せる手段としてはよいのではないでしょうか。
2. より根本的な解決策
もっと良い解決方法は、Kalita Waveのステンレス製の代わりに、セラミック製やガラス製を使うことです。
セラミック製/ガラス製のKalita Waveはステンレス製とは底の構造が異なり、
詰まりにくく設計されているんです。
ぼくも比較検証してみましたが、やはり湯抜けが速い。
何より詰まりにくいので、渋味を感じにくいですし、より挽き目を細かく調整できるので、
甘味も引き出しやすくなりました。
もしKalita Waveの購入を検討されているなら、ステンレス製よりもセラミック製/ガラス製をオススメします。(値段も安いし)
まとめ:美味しいコーヒーへの道のり
以上、コーヒーがドリップ中に詰まる問題と解消法4つでした。
余談ですがコーヒー豆によっても詰まりやすいものがありまして、
エチオピアのコーヒーなんかは特に詰まりやすいです。
理由として、エチオピアの豆は密度が高く、硬いため、
コーヒーを挽く際に、刃で「カット」されるよりも「潰れる・砕ける」に近い形で粉になるため、微粉を多く発生させてしまうようですね。
上記の方法を試してもなかなか難しいと感じる方は、
いっそコーヒー豆を専門店で挽いてもらって、粉で買うほうが美味しく飲めるかもしれませんね。
ということで、今日は以上です。
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それではHappy Brewing!
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