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27%の可能性!"過抽出"ではない次世代コーヒーの話

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コーヒー好きの皆さん、こんにちは。

バリスタのtabikuraです。

 

今回は、「高抽出収率のコーヒー」についてお話しします。

 

近年、コーヒーの抽出技術は進歩し、

"ネガティブな要素を抑えつつ、いかにポジティブな要素を最大限引き出すか"

というような新しい抽出方法が模索されています。

これにより、以前のコーヒーの常識が変わる時代が訪れました。

 

例えば、以前は良しとされなかった高抽出の領域へのチャレンジが行われ、

予想外の結果が得られることもあり、過剰抽出の定義も見直されるなど、コーヒーの楽しみ方も更に広がっています。

 

そこで、本記事では、近年の抽出トレンドである「高い抽出収率のコーヒー」について詳しくお伝えします。

コーヒーの最新情報に興味のある方には必見の内容だと思います。

 

普段のコーヒーを飲みながら、リラックスした気持ちで読んでいただけると幸いです。

 

新たな局面。今日における抽出収率の"限界点"と近年の"境界線の変化"

 

これから抽出の話をするうえで、最低限の前提知識をご説明します。

 

まずは、

総溶解固形分(TDS抽出収率(EY)という言葉を知っておきましょう。

 

TDS = 液体の濃さを表す値です。

EY = コーヒー成分が水にどれだけ移動したかを示す値です。

 

TDSは濃度を表すので、液量が増えれば減少します(薄まる)

EYはコーヒーからどれだけ成分が引き出されたかの指標であり、液量の増減には関係がありません

 

一般的に、日本のカフェで提供されるコーヒーの抽出収率(EY)は、15%〜20%くらいが普通です。(経験に基づいた予測です)

 

コーヒーの可溶性成分の上限約30%とされていますが、

SCA(Specialty Coffee Association)のチャートでは、18-22%が理想的な抽出収率とされており、

それを超える数字(23%-)は"過抽出"と定義されていました。

 

過抽出のコーヒーは渋くて、苦いと感じられ、

バリスタ達も抽出失敗時に使う、お馴染みのワードだと思います。

 

しかし、コーヒーの技術進歩により、

ここ数年ではこれまでは"過抽出"とされていた27%の抽出率でも美味しいコーヒーを楽しめるようになってきたようです。

 

つまり、「高い抽出収率」=「過剰抽出」とは一概に言えなくなってきた訳ですね。

 

 

では、これは一体どういうことなのでしょうか。

 

 

「渋味」の原因が「過剰抽出」でないのなら、果たしてどこからやってくるのか?

 

「高い抽出収率=過剰抽出」の定説見直されたきっかけは、

 

世界的なコーヒーのオピニオンリーダーであるScott Rao氏が、

2019年に30%の抽出収率のエスプレッソ抽出に成功させたことにあります

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抽出収率30%というと、コーヒーの可溶性成分はほぼスッカラカンな状態ですので、

通説通りいくと、かなり渋くてマズいコーヒーになるはずですよね。

 

ところが驚くべきことに、その30%の抽出収率のコーヒーでは渋みを感じることが非常に少なかったのだそうです。

そのことから、渋味の原因はコーヒー成分の過剰抽出ではなく、別の原因があるのではないか?という説が浮上した訳です。

 

そんなこんなで、現在最も有力な仮説は、

天文物理学者でありコーヒーエキスパートのJonathan Gagneによる以下の内容です。

 

 

[渋味の新説]

 

渋味の要因となる分子は、挽き目が細かったり、抽出温度が高くなったりするほど増加する。

また、渋味分子は水に溶けにくい性質も持ち、溶けきらなかった分子は通常、抽出時にドリッパー内で浮遊している。


・渋味分子は大きい為、コーヒーベッドを通過する際に濾過される傾向がある。

そのため、コーヒーベッドは一定の厚みを保つことで濾過システムとして機能し、最終的にカップに入るコーヒーの渋味が少なくなる。

 

・しかし、チャネリング(不均一で偏った経路からの抽出)やバイパスウォーター(ドリッパーのサイドから逃げる水)など、

渋味分子がコーヒーベッドを通過・濾過されずにカップへ到着すると、最終的なコーヒーが渋く、マズくなる。

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つまり、コーヒーをマズくする渋みの原因は、抽出時の成分の過剰抽出ではなく、

 

コーヒーを挽いた際に生じる「渋味分子」が、コーヒーベッドの濾過システムをすり抜けてカップへ入り込むことによるものである可能性が高い、という説です。

 

これまでの常識を覆す説で、非常に興味深いものです。

 

 

驚愕、天文物理学者のエアロプレスでの高収率抽出レシピ

 

ただ数値だけを聞かされても信じられん!

そう思うのも当然ですよね。

結局、自分の舌がどう感じるかが最も重要です。

 

そこで、実際に「高い抽出収率のコーヒー」を体験する方法をご紹介いたします。

 

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Jonathan Gagne氏のエアロプレスレシピです。

こちらは、平均抽出収率23.5%ほどの高収率のコーヒーを楽しむことができます。

味わいとしては抽出収率27%のドリップコーヒーに非常に近いとGagne氏もコメントしています。

 

詳細は以下記事をどうぞ!

 

 

まとめ

 

そんなわけで、近年の抽出トレンドのお話でした。

コーヒーの世界も常識がどんどん変化しているので、

 

いつもと違う方法を試してみるのも面白いと思います。

 

記事に出てきたチャネリングとかの意味が分からんって方はこちらを参照ください。

 

ではまた!